肺癌とイレッサについて

4. イレッサ、始めました

2012年10月1日(月)

イレッサ投与開始

イレッサの服用を開始しました。

イレッサは錠剤です。1錠に有効成分ゲフィチニブを250㎎含みます。
ゲフィチニブの血中濃度を一定に保つことが重要で、決まった時刻に1日1錠服用します。グレープフルーツを食べたり、グレープフルーツジュースを飲んだりしてはいけません。グレープフルーツに含まれる成分が肝臓でのゲフィチニブの分解を阻害し、ゲフィチニブの血中濃度が高くなり過ぎ、副作用が強くなる恐れがあるためです。グレープフルーツ以外の柑橘系フルーツはOKです。
14錠(2週間分)が一つのパッケージになっています。患者負担は1錠約2,000円程度になります。

イレッサ

2週間分14錠を院内処方してもらい、毎朝食後1錠服用します。点滴で投与する一般の抗癌剤と異なり、投与するために入院する必要は無いのですが、副作用を監視するために2週間入院します。

最も警戒すべき副作用は間質性肺炎です。一般の肺炎は、空気に触れる肺胞や気管支の炎症ですが、間質性肺炎は、肺胞を裏から支える「間質」と呼ばれる組織の炎症です。治療が難しく、死に至るリスクも高く、美空ひばりさんの死因となりました。
2週間入院中に万が一発症した場合は、イレッサの服用を即刻中止し、間質性肺炎の治療に努め、回復後は一般の抗癌剤での治療に切り替えなければなりません。非喫煙者は発症するリスクは非常に少ないのですが、風邪をきっかけとして発症することもあるそうですので、風邪をひかないように注意しました。

10月16日(火)

退院

15日(月)に、呼吸器外科・呼吸器内科双方により、以下のように退院できる状況にあることが確認され、翌16日に無事退院することができました。

以後は、自宅でイレッサを服用し、経過を観察することとなりました。

ただ、私の場合、イレッサが効いているかどうかをどうやって判断するかが課題となりました。通常、イレッサは、手術ができないステージⅣの患者に対して適用しますので、癌細胞が体内に残っており、それが大きくならない、あるいは、縮小することにより、効いていることが分かります。しかし、私の場合、主な癌細胞を切除してしまったため、同様の判定ができません。腫瘍マーカーが使えそうですが、私の場合、癌細胞があるときから腫瘍マーカーが低い値を示していたため、これもあてになりません。結局、癌が再発するまでは、イレッサが効いているものとして、イレッサを服用し続けることとなりました。

肺癌とは関係ない話(2)

病院の売店の隠れたベストセラーはファブリーズかもしれません。

呼吸器科に限らず入院される患者さんには愛煙家が少なくなく、入院と同時に禁煙しなければならないのですが、そう簡単にできないことも、する気がないことも明白です。そのため、入院当日、患者さんと付添いの奥さんとの間で、以下のようなやり取りが交わされます。

「あんた、財布どこやったの?」

「セキュリティボックスに入れた。」

「出しなさいよ。」

「どうして。」

「必要ないでしょ。」

「何かあったらどうすんだよ。」

「私に電話すりゃいいじゃない。」

「夜中かもしれないし。」

「夜中なんか、何も無いわよ。」

「そんなの、分かんねぇだろ。」

「あんた、まさかタバコ買うつもりじゃないだろうね。」

「そ、そ、そんなわけないですよ。」

「なに敬語になってんのよ。出しなさいよ。」

「やだよ。」

この難関を突破した患者さんは、奥さんが帰ると、タバコとファブリーズを買いに行きます。

5. イレッサの副作用 肝機能障害

イレッサは一般の抗癌剤と異なり、体への負担は少ないですが、副作用が無いわけではありません。むしろ、間質性肺炎によって死に至るリスクがあります。

いろいろな副作用が報告されており、それらが発生するかしないか、およびその程度には個体差があります。私の場合は、服用してから2週間後あたりから、以下のような副作用が見られるようになりました。皮膚関連が多いようです。

発疹

体幹(胸と背中)、うなじ、口の周りに発疹が現れました。痒くはありません。

大森赤十字病院の皮膚科でリンデロン-VGクリーム0.12% 5g×2本を処方してもらいましたが、かゆみが無いため、目につくうなじと口の周りだけにちょっとつけただけで、すぐにやめてしまいました。

うなじと口の周りの発疹は数カ月で消えました。
体幹の発疹は徐々に小さくなり、イレッサを服用し始めてから1年後には、良く見るとまだあるのですが、ほとんど目立たなくなりました。

イレッサの副作用 発疹 2012年11月5日 イレッサの副作用 発疹 2013年11月18日

手足のにきび

今までにきびの出来たことの無い腕と足に大きなにきびが出来るようになりました。ただし、冬季だけです。

これは、1年後の冬も同程度見られます。

イレッサの副作用 手足のにきび 2013年2月9日 イレッサの副作用 手足のにきび 2013年11月21日

足の甲の汗疹

2013年夏に、両足の甲に細かい発疹が出来ました。とても痒く、汗疹と自己診断しました。皮膚科にかからず、何もせずに放置していましたら、1週間程度で消えました。イレッサの副作用ではないかもしれません。

イレッサの副作用 足の甲の汗疹

爪の割れ

爪に縦の筋が入るようになり、縦に割れやすくなりました。また、爪自体が弱くなり、ホッチキスの針を取り除こうとしたり、ちょっとどこかに引っ掛けたりしただけで、爪が大きく傷ついたり、横に腺が入ったり、薄くはがれたりするようにもなりました。そのため、爪をこまめに切るようにして、透明なマニキュアを塗って保護するようにしました。

ただ、その後、外に出てランニングをするようになりましたら、症状が見られなくなりましたので、イレッサの副作用ではなく、紫外線を浴びる機会が少なくなったことによるビタミンD欠乏症だったのかもしれません。

イレッサの副作用 爪の割れ

下痢

下痢という表現は適切ではないかもしれません。便の前半は普通の便ですが、後半は固まり切らず下痢状になります。毎朝見られますが、お腹が痛くなったり、何度もトイレに駆け込んだりすることはありません。

イレッサを服用し始めてから1年ぐらい経過したころから、徐々に軟便化の度合いが軽くなって来ています。

頻尿

毎日午前11時~午後1時の間、ほぼ30分おきに小便が出ます。尿意を感じるだけでなく、実際に大量に出ます。始めは、イレッサを毎日午前8時~8時半の間に服用していたので、服用後3時間~4時間後に尿が出るのかと思っていましたが、隔日で服用するようになっても、毎日、すなわち、服用しない日も同様に、同じ時間帯に頻尿になりますので、イレッサを服用する時刻は関係ないのかもしれません。ただ、イレッサを服用するようになってから始まった症状ですので、イレッサが起因していると考えています。

夏場、汗をかくようになると、尿の間隔は長くなります。

肝機能障害

GOT、GPTの数値が肝炎レベルまで急上昇しました。

詳細は以下に時系列的に示します。

2012年10月29日(月)

イレッサを服用し始めてから4週後(退院2週後)に、胸部X線写真を撮り、血液検査を実施し、その結果を元に呼吸器内科の診察を受けました。

胸部X線写真

手術痕の影がだいぶ薄くなり、胸水もだいぶなくなり、左肺の最下端が鋭角に尖って見えるようになりました。胸水の発生元は、手術痕の他に、胸膜に残っている結節が考えられますので、「胸水が減っているということはイレッサが効いていると考えられる」と呼吸器内科の先生は見ています。

手術前、胸膜に幾つかの結節があった時でも、胸水は胸部CTで視認できるほど溜まっていませんでしたので、結節をある程度取り除いた状態では、結節由来の胸水の量はかなり少ないと考えられ、「胸水が減っているということはイレッサが効いていると考えられる」という見解は「希望的かな」と思います。

2012年10月29日の胸部X線画像

血液検査

GOTが82、GPTが161まで急上昇しました。

間質性肺炎の次に恐れていた肝機能障害です。

肝機能障害で良く見られる吐き気や倦怠感といった症状はありませんが、これ以上数値が悪くなるとイレッサの服用の中止を検討しなければならなくなりますので、服用し続けることを優先して、翌日の30日(火)から隔日で服用することとなりました。本当は有効成分ゲフィチニブの量が半分(125㎎)の錠剤があれば良いのですが、残念ながらありませんので、1日おきに250mgの錠剤を服用します。

GOT、GPTは肝臓のダメージの度合いを表します。肝細胞が壊れると上昇します。しかし、すぐに肝機能障害が現れるわけではありません。肝臓は再生可能・修復可能な臓器ですので、肝細胞を再生してあげれば、肝機能の低下を防ぐことができます。そこで、以下のように、肝臓に負担をかけないように、かつ、肝臓の再生を促すようにしました。

  • 食後一時間は体を横たえ、肝臓に循環する血液の量を増やすようにしました。眠る必要はありません。ただ体を横たえれば良いので、読書をして過ごしました。
    なお、これだけは、後日、GOT、GPTの数値が正常値に戻ってからは実施していません。
  • 三食の量を均等にして、消化に伴う肝臓の負担が均等になるようにしました。それまでは、夕食にドカ喰いをしていました。
    また、夕食は就寝の3時間前には終えるようにしました。
  • 肝細胞の修復の材料であるたんぱく質をたくさん(一日90g以上)取るようにしました。肉よりも魚介が良く、肉の中では鶏肉が良いそうです。ただ、たんぱく質だけではだめなので、炭水化物と脂肪もきちんと摂るように心がけました。
  • GABAが良いと聞き、発芽玄米を食べるようにしました。ただ、これは、実際に効いているのかどうか分かりません。
  • 8時間以上睡眠をとるようにしました。
  • トランス脂肪酸など、「肝臓に良くない」と言われているものをなるべく避けるようにしました。ただ、これに関してはあまり神経質にならず、ポテトチップスなどバリバリ食べています。
10月30日(火)

イレッサの副作用の発疹について、皮膚科を受診しました。

発疹に関しては、上述の通り、リンデロン-VGクリーム0.12% 5g ×2本が処方されましたが、痒みが無いため、ほとんどつけませんでした。

また、手術後ずっと、下図の丸印(左肺の横隔膜の下、臍の斜め上)付近の皮膚直下に、座っているときにだけ圧痛を感じることがあったので、腫瘤や炎症性変化がないか、エコーで調べてもらいました。

2012年10月30日のエコー検査の場所

このとき初めて、人間の胴体は、内臓の塊に皮を張っただけだということが分かりました。

エコー画像に白い塊が見えたので、

「これが皮下脂肪ですか?」と聞くと、

「いえ、小腸です。」

「腹筋はどこですか?」

「これですね。」と、薄っぺらい層を指します。

「・・・」

「その上が皮下脂肪と皮膚です。」と更に薄っぺらい層を指します。

所見左腹部(臍の左上付近)の本人の気にされる部分には、明らかなmass様の所見は指摘できません。
ドプラによる血流の増強などみれなく、腹壁から突出する腸管等も指摘できません。
Impressionエコー上、明らかな異常は指摘できません。

ドプラとは「ドップラー効果」を利用して「動いているもの」を見る検査です。血流など速く動いている部分に色がついて表示されます。

結局、異常は見られず、知覚異常と診断されました。
手術後現れた症状ですので、手術と関連していると思われるのですが、手術で切った肋間神経痛とは離れており、原因不明です。

11月12日(月)

血液検査を実施し、呼吸器内科を受診しました。

GOTは86、GPTは163でした。

高い値ですが、「安定」しているので、イレッサはこのまま隔日で服用し続けることとしました。

また、インフルエンザをきっかけとして間質性肺炎になる場合があるとのことですので、インフルエンザの予防接種をしました。小学生のとき以来です。

11月26日(月)

血液検査を実施し、呼吸器内科を受診しました。

GOTは61、GPTは103でした。

GOT、GPTの数値が少し改善されました。どうやら、服用量を変えてから変化が見られるまで、1カ月ぐらいのタイムラグがあるようです。このまま隔日服用を続けます。

皮膚科も受診しました。

発疹は少なくなりました。特に、うなじと口のまわりの発疹がほとんど無くなりました。その代わり、乾燥肌が見られるようになりました。もともと毎冬乾燥肌には悩まされてきましたので、イレッサの副作用ではないかもしれません。市販のローションで対応することとなりました。

12月17日(月)

胸部CTを撮り、血液検査を実施し、呼吸器内科を受診しました。

胸部CT

肺が大きく膨らみ、手術痕も縮小し、胸水はほぼ完全に無くなりました。10月29日(月)にも記載しましたが、胸水の消失はイレッサが効いている証拠であると呼吸器内科の先生は見ています。

2012年12月17日の胸部CT画像

血液検査

GOTが32、GPTが51まで低下しました。

呼吸器内科の先生は、「副作用を良くコントロールできている状態」と評価します。隔日服用を続けます。

2013年1月21日(月)

血液検査を実施し、呼吸器内科を受診しました。

GOTが27、GPTが35まで低下し、正常値となりました。

ここで、イレッサを連日服用に戻すかどうかを検討することになりました。実はイレッサの適量は分かっていないそうです。服用量を増やせば効果は大きくなりますが、同時に副作用も大きくなります。薬効と副作用のバランスのとれた量が「適量」となるのですが、個体差が大きく、各患者さんごとに探り探り適用しているのが実情だそうです。隔日でも副作用が強く、2日おきに服用している患者さんもいらっしゃるそうです。
先生は、私に「どうしたいですか?」と聞いてきました。私は、何となく現在の量が適量と感じていたため、「隔日で行きましょう。」と答えました。

皮膚科も受診しました。

うなじと口のまわりの発疹は無くなりました。また、10月30日(火)に知覚異常と診断された痛みも無くなりました。

GOT、GPT

肺癌とは関係ない話(3)

2012年から、夏の間だけ、左手の掌が異常にふやけるようになりました。

シャワーを浴びただけで、指だけでなく、掌全体が白くぶよぶよにふやけます。左右差があり、左手だけが異常にふやけます。

2013年も発症していますが、イレッサ服用前からですので、イレッサの副作用ではありません。肺癌になってからですので、肺癌が関係している可能性はありますが、ちょっと考えにくいです。呼吸器内科の先生も「肺癌の症状として聞いたことがない」とおっしゃっています。掌の水気を拭き取るとすぐに消失しますので、皮膚科に相談しておらず、原因不明です。(下の写真は消えかかっている時に撮っていますので、シャワーを浴びている最中はもっとひどくふやけています)。

いろいろ調べましたが、手がふやける仕組みは未だ解明されていないようです。神経を切った指はふやけないそうなので、何らかの反射が関係していると思われます。私の場合、夏のみに現れますので、さらに「汗をかくこと」が関係していると推察しています。

異常にふやけた手

6. イレッサの副作用 育毛効果

1月21日(月)の診察の時に、呼吸器内科の先生が、おかしなことを聞いてきました。

「髪の毛はどうですか?」

「???」

「髪の毛は増えてきましたか?」

「分かりませんが、、、」

「増えてきたように見えますが。」

「肺癌と関係あるんですか?」

実は関係あるんです。イレッサと。
アメリカでイレッサを服用している患者さんの禿が治ったという報告があるそうです。また、この呼吸器内科の先生が見ていらっしゃる患者さんの中にも「イレッサを飲むようになってから、髪の毛がコワくなったし、黒くなった」と言っている人がいるそうです。

家に帰って、家内にこの話をすると、「実は、私も、最近カッパ君じゃなくなってきたな、と思ってたの。」と言うではないか。自分では分からないので、頭頂の写真を撮ってもらって、昔の写真と見比べてみると、明らかに髪の毛が増えたように見えます。

イレッサの副作用 育毛効果

その後、気にして観察すると、私の場合、発毛効果は見られませんが、育毛効果・増毛効果は明らかに見られます。すなわち、新たに髪の毛が生えてくることはありませんが、産毛のようだった髪の毛が太く、かつ、黒くなって、髪の毛が増えたように見えるのです。白髪も少なくなり、少し若返ったように見えます。「抗癌剤」と聞くと毛が抜けてしまうイメージが強いですが、イレッサは逆です。こういう副作用はうれしいですね。

それから、私の場合、濃くなったのは頭の毛だけではありません。足や腕の毛、胸毛や髭、そして、鼻毛など、ありとあらゆる毛が濃くなり、毛深くなったように見えます。呼吸器内科の先生によりますと、まつ毛が濃くなって、一部が逆まつ毛のように生えてきて、目に入って痛くて困っている方もいるそうです。

詳しいことは分かりませんが、呼吸器内科の先生によると、EGFRに関する遺伝子と発毛(育毛?)に関する遺伝子に近い部分があるそうです。この研究が進んで、世の薄毛に悩む男性諸氏に早く朗報が届けられることを願ってやみません。

2013年2月25日(月)

胸部X線写真を撮り、呼吸器内科を受診しました。

胸部X線写真

異常無し。

2013年2月25日の胸部X線画像

皮膚科も受診しました。

発疹はだいぶ少なくなりましたが、まだ体幹には残っています。しかし、痒くないことと、他の人にうつるものではないことから、薬を使用せずにこのまま放置することとなり、この日をもって皮膚科は終了することとなりました。

3月1日(金)

数日前から喉が痛くなり高熱が出ましたので、急遽呼吸器内科を受診しました。風邪によるものと診断されましたが、間質性肺炎や肝機能障害がこわいので、念のため、胸部X線写真を撮り、血液検査を実施しました。

胸部X線写真

25日(月)の写真と同じで、きれいです。間質性肺炎の兆候は見られません。

2013年3月1日の胸部X線画像

血液検査

GOT、GPTともに18で、極めて良好です。

PL配合顆粒とトランサミンカプセルを5日分処方してもらいました。

3月25日(月)

血液検査を実施し、呼吸器内科を受診しました。

GOTが24、GPTが30。正常値範囲内で安定しています。

肝臓の数値も良く、経過が非常に良好なので、ジョギング程度ならば運動しても良いことになりました。

7. イレッサ耐性

イレッサを服用し始めてから1年~数年経過すると、癌細胞が再び増殖を始めます。その原因として、「癌細胞がイレッサ耐性を獲得するから」と言われていますが、私は「患者の体自体のイレッサを代謝する機能が向上し、その結果、イレッサの有効成分ゲフィチニブの血中濃度が服用後すぐに低下してしまい、増殖の抑止力がなくなるためではないか」と考えています。

イレッサを服用し始めてから1年経過したころから、以下のように、全体的に副作用が軽くなってきました。

  • 発疹は小さくなり、ほとんど目立たなくなりました。
  • 便の後半の軟便化の度合いが軽くなってきました。
  • 育毛効果は頭打ちないしは後退の傾向が見れらます。
  • 冬季に見られる手足のにきびのみ、症状は変わりません。

上記のうち、育毛効果に関しては、季節要因を排除するために、前年と同じ日(12月13日)に同じ床屋で5分刈りにし、前年と同じ日(2月19日)に写真を撮影して比較しましたが、残念ながら毛量は減少しています。もちろん、1年間の経年劣化がありますが、それを考慮しても減少は否めません。明らかに副作用は軽くなっています。

イレッサの副作用 育毛効果の変化

2014年2月19日に比べて、2015年2月19日、2016年2月19日の方が髪の毛(特に前頭部)が増えているように見えます。実は、2015年1月からRiUP X5(大正製薬)を使用しており、その効果と思われます。

2017年に関しては、それまでの写真と以下の点が異なります。(a)2017年1月14日にこれまでとは異なる床屋で丸刈り(4mm)にしています。(b)撮影日が2月14日です。(c)撮影角度が真上からです。(d)iPhoneで撮影しています。

副作用が軽くなった原因として、以下の2つが考えられます

  • 癌細胞だけでなく、正常細胞も耐性を獲得する。
  • イレッサを代謝する機能が向上し、イレッサの成分ゲフィチニブの血中濃度がすぐに低下してしまう。

この2つのうち、皮膚に関する副作用と内臓に関する副作用(軟便)の両方が同時に軽くなってきていることから、両方が同時に耐性を獲得しつつあると考えるよりは、イレッサの成分の血中濃度が薄くなっていると考える方が自然なのではないかと思います。

「内臓の粘膜は皮膚と同等であると考えられるから両方が同時に耐性を獲得してもおかしくない」というご意見もあるかと思いますが、便の半分が軟便化するという症状は、腸の粘膜が影響を受けて発生している症状ではなく、肝臓が影響を受け、胆汁の分泌量が減少した結果発生していると思われます。実際、便の色は薄くなっているように思われます。したがって、やはり皮膚と内臓が同時に耐性を獲得すると考えるのは無理があるように思います。

もし、私の説が正しいとすると、副作用が軽くなったことは喜ぶべきことではなく、由々しき前兆ということになります。この点に関し、呼吸器内科の先生は、「副作用に変化が見られた原因は分からない」とおっしゃっています。まず、イレッサが癌細胞に効くメカニズムは分かっているが、副作用が現れるメカニズムは分かっていないのだそうです。また、イレッサの有効成分ゲフィチニブの血中濃度を測定するのも難しいのだそうです。したがって、実際に癌が再増殖し始めるまで服用し続けるしかない、とのことです。

ただ、私の場合、手術で癌細胞をかなり取り除いたため、仮に、イレッサの成分ゲフィチニブの血中濃度が低下しても、再増殖が見られない可能性もあると考えています。(これが、私が手術で癌細胞を取り除くことを勧める理由の一つになっています)

イレッサは、癌細胞の中のチロシンのリン酸化をブロックすることにより、癌細胞の増殖をブロックします(下図は、呼吸器内科の先生が、イレッサが癌細胞の増殖を抑えるメカニズムを説明して下さったときに描かれた図です)。呼吸器内科の先生によれば、「一度作用したブロックが外れることはない」とのことなので、全癌細胞のチロシンのリン酸化をブロックするに十分の量を服用していれば、以後再増殖することはないことになるからです。ただ、呼吸器内科の先生によれば、「イレッサが耐性を獲得するメカニズムとしては、そもそもイレッサがリン酸化をブロックできない癌細胞があり、それが生き残るのではないか、という説がある。」とのことなので、油断はできませんが。

イレッサが癌細胞の増殖を抑えるメカニズム

肺癌とは関係ない話(4)

大森赤十字病院は快適でした。

病院食は意外とおいしく、看護婦さんも皆良い方ばかりです。

病室からの眺めも良く、私が入っていた北側の病室からは本門寺や富士山を拝むことができます。10月11日~13日の本門寺のお会式の際には、南側の病室からは山車を見ることができるそうです。また、屋上に小さな庭園があり、その一角からはスカイツリーが見られます。(屋上庭園は夕方には閉まりますので、花火を見たりすることはできません)。

大森赤十字病院からの眺め

しかし、もう、肺癌の患者さん、あるいは、肺癌が疑われる患者さんに、大森赤十字病院はお勧めできません。呼吸器内科の医師数が不足しており、肺癌のように時間をかけて診なければならない患者さんにきちんと対応できないためです。